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肩関節前方脱臼の整復を困難にする危険因子
Risk factors for failure of reduction of anterior glenohumeral dislocation without sedation
古旗 了伍
1
,
鎌田 雄策
2
,
松村 昇
3
,
河野 亜紀
2
,
森岡 秀夫
2
R. Furuhata
1
,
Y. Kamata
2
,
N. Matsumura
3
,
A. Kono
2
,
H. Morioka
2
1足利赤十字病院整形外科
2国立病院機構東京医療センター整形外科
3慶應義塾大学整形外科
1Dept. of Orthop. Surg., Ashikaga Red Cross Hospital, Ashikaga
キーワード:
glenohumeral dislocation
,
irreducible
,
age
,
fracture
Keyword:
glenohumeral dislocation
,
irreducible
,
age
,
fracture
pp.1403-1406
発行日 2022年12月1日
Published Date 2022/12/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_seikei73_1403
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【要 旨】
目 的:肩関節前方脱臼は頻度の高い脱臼であるが,無麻酔下の整復に難渋し,麻酔下の整復を要する症例を経験する.しかしながら,これまで整復を困難にする危険因子は明らかとなっていない.本研究の目的は,無麻酔下の肩関節前方脱臼の整復の成否に影響を及ぼす因子を多変量解析により明らかにすることである.
対象および方法:外傷性肩関節前方脱臼に対して,挙上法で整復を行った患者を後ろ向きに評価した.目的変数は無麻酔下の脱臼整復困難例とした.説明変数は,年齢,性別,受傷肩の左右,初回脱臼,腋窩神経損傷の有無,脱臼から初回整復までの期間,大結節骨折の有無,外科頚骨折の有無,関節窩骨折の有無,関節の変形性変化の有無とした.単変量解析で有意な関連を認めた変数のみを選択し,ロジスティック回帰分析による多変量解析を行った.
結 果:肩関節前方脱臼156例のうち,25例(16.0%)が無麻酔下に脱臼整復が困難であった.多変量解析の結果,無麻酔下の整復困難となる危険因子は55歳以上の高齢者(オッズ比3.4,p=0.036),大結節骨折合併例(オッズ比3.6,p=0.033),関節窩骨折合併例(オッズ比11.5,p=0.018)であった.
結 論:本研究では,高齢者,大結節骨折合併例,関節窩骨折合併例が無麻酔下の肩関節脱臼整復を困難にする危険因子として示された.これらの危険因子を有する症例では麻酔下の整復を考慮する必要性が示唆された.
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