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【要 旨】
目 的:母指手根中手(CM)関節固定術は,同部位に限局する変形性関節症に対して有効な治療法である.本手術は母指の痛みを軽減し,握力やつまみ力を回復させるが,術後の母指運動制限は避けられない.本研究は,CM関節固定術と追加処置として行う大菱形骨尺側の部分切除に伴う母指の運動学的変化を調査した.
対象および方法:8体の新鮮屍体上肢を使用した.第1中手骨,大小菱形骨を除き,手根骨・手を実験台に固定した.第1中手骨先端に50gの荷重をかけ,他動的に母指分回し運動を行った.三次元電磁センサにより,第1中手骨の角状と回旋の変位を計測した.CM関節固定前(condition 1),固定後(condition 2),大小菱形骨間関節を3mm切除したもの(condition 3),さらに大菱形-第2中手骨間を3mm切除したもの(condition 4)について計測した.
結 果:Condition 2の母指角状(内外転・屈伸)可動域はcondition 1の25%に減少した.大菱形骨を追加切除することにより,condition 3,4の角状可動域はcondition 1の49%および73%に増加した.回旋可動域も同様の傾向を示した.
結 論:母指CM関節固定により母指の角状および回旋可動域は減少するが,固定後の追加処置として大菱形骨尺側の部分切除により,その運動範囲は増加した.このことは,大菱形骨尺側の可動性増大がCM関節固定術後の母指の可動性を増加させる可能性を示唆する.また,大小菱形骨間関節の可動性が高い患者は,CM関節固定術後に良好な母指の可動域を期待できる.CM関節固定術後に可動域制限を訴える患者において,大小菱形骨間関節の追加切除は可動域を増大させる可能性がある.
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