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われわれは,関節リウマチ(RA)の動物モデルであるコラーゲン誘導関節炎(CIA)マウス膝関節を用いたトランスクリプトーム解析において,CIA誘導後に顕著に発現が増加した機能未知のマウス遺伝子を同定し,synoviocyte proliferation associated in collagen induced arthritis 1(SPACIA1)と命名した1).SPACIA1はserum amyloid A-like 1(SAAL1)と同一の遺伝子で急性炎症マーカーとして知られるserum amyloid A(SAA)スーパーファミリー2)に分類されるが,SAA1とのアミノ酸配列の相同性は27%で,肝心のSAAドメインをもたない機能未知の因子であった.新規因子であるSPACIA1/SAAL1(SPACIA1)はマウスおよびRA患者由来の過形成滑膜組織において滑膜マクロファージ様細胞ではなく滑膜線維芽細胞(RASF)で強発現し,変形性関節症(OA)患者由来組織においても同様のプロファイルであった.また培養RASFにおいて,SPACIA1の発現抑制はアポトーシスを誘導することなく細胞周期G1期の遅延をきたし,特にTNFαで刺激した増殖を顕著に抑制した.G1期因子であるサイクリンDキナーゼのCDK6は培養RASFにおいてTNFα刺激による転写調節を受けるが,SPACIA1が関与する転写後レベルの制御(CDK6 mRNAの安定化)によっても発現増強されることが明らかとなった3).一方で,同じサイクリンDキナーゼで,CDK6と相同性の高いCDK4遺伝子発現は培養RASFにおいてTNFαやSPACIA1の影響を受けなかった.培養細胞レベルで得られた知見をもとに新規滑膜細胞増殖関連因子として特徴づけられたSPACIA1の個体レベルでの機能解析の結果,SPACIA1過剰発現マウスはCIAの早期発症と増悪化を示した1).
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