誌説
がんロコモとサルコペニア・悪液質
川島 寛之
1
1新潟大学大学院整形外科・リハビリテーション学教授
pp.104-104
発行日 2021年2月1日
Published Date 2021/2/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_seikei72_104
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- 文献概要
長寿高齢社会となり,生涯にがんに罹患するリスクは男性で62%,女性で47%,つまり2人に1人ががんに罹患する時代になっている(国立がん研究センターがん対策情報センター).一方でがん医療の進歩により,がん罹患後の生存率は上昇し,罹患数と死亡数の差は拡大傾向にある.つまり,がんになっても長く生きられる時代が到来している.がんとともに生きる上では,当然のことながら,苦痛なく元気で長生きを目指し,生活の質(QOL),日常生活動作(ADL)の維持が求められる.社会生活を全うする上では,運動器の健康維持は非常に大切であるが,幸い骨以外の運動器はがんの転移標的となる頻度は少ない.一方でがん骨転移は増加しつつあり,疼痛や病的骨折,脊髄圧迫,高カルシウム血症などの骨関連事象を引き起こし,QOLを低下せしめる原因にもなる.さらに,がんの治療に伴う骨・関節障害,筋力低下,神経障害といった運動器の問題や,変形性関節症・脊椎症や骨粗鬆症などのがんと併存する運動器疾患の問題などもがん患者におけるロコモティブシンドローム(がんロコモ)の原因となりうる.運動器の専門家である整形外科医は,このような病態を早期に診断し,適切に介入することで,がん患者のQOL維持に貢献することができると考えられる.
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