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は じ め に
手術や薬剤による治療を行った際に,治療の有効性を評価するためには,患者の治療に対する反応やアウトカムのデータを収集し,治療のおかげでよい反応やアウトカムが得られたのかどうか,データにもとづき判断することが必要になる.有効性の評価を適切に行うためには,いったいどのようなデータをどの程度収集し,どういった統計解析と評価が必要になるのか,個別の状況に応じた検討が必要であり,容易なことではない.
たとえば,新型コロナウイルス感染症の感染拡大が勢いを増す中,いくつかの治療薬の候補があがっているが,新型コロナウイルス感染症の治療薬あるいは重症化の予防薬としての有効性評価をいかにはやく確実に実施すればよいか,緊急的な課題となっている.科学的な視点については,あまり一般の方向けには報道されていないものの,臨床試験の専門家の間で日々国際的な議論がなされているところである.
また,集団に対する判断か個人に対する判断かによっても評価の仕方は異なる.目前の患者に対する治療が奏功したか否かについては,画像データ,問診,臨床検査値の推移などにより患者の状態変化を詳細に把握している臨床医であれば,総合的判断を下すことは容易かもしれない.一方,ある一定の基準で選択された患者集団に対しなんらかの治療を施し,たとえば,visual analogue scale(VAS)により疼痛の程度を測定したとする.この集団のVASの平均値に基づき治療のおかげで疼痛が改善されたのかどうかを評価しようとした場合,最低値の0mmに近いか最大値の100mmに近い場合などの極端なケースを除けば,平均値の値自体で治療効果を判定することは困難である.
このような個人差のあるデータから,平均値が治療により改善したのかどうかを判定するために必要となる解析方法が,「群間比較」である.群間比較は,治療の有効性評価に用いられるあらゆる統計解析の基本である.なぜなら,比べてみることによってはじめて,得られたデータや治療の有効性によるものであるのかどうかが評価可能となるからである.そこで,本項では,群間比較に用いられる代表的な統計手法の解説を行う.
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