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代表値の群間比較検定法とその選択
標本代表値(平均値・中央値)を群間比較する場合,標本測定値の観察特性と分布特性および測定値群の数によりいくつかの検定法がある.これを図1に示した.検定法の選択は,まず観察特性,すなわち標本測定値(データ)に対応があるか否かで大きく二つに分かれる."対応あり"とは,ある操作を加える前と加えた後(例えば手術前後や点眼前後)のように,同一標本についての異なる2時点の測定値が対(pair)として与えられている場合である."対応なし"とは,いくつかの独立標本について測定値が与えられている場合である.操作A,B,Cを別々に加えた3標本と無操作の標本のように,互いに独立した4標本がある場合である.
この観察特性について,しばしば判断の誤りが見られる.例えば何人かの患者群について,ある操作を加える前の測定値の平均をコントロールとし,同一患者群に操作を加えた後のいくつかの時点での測定値の平均を比較する場合に見られる.この場合は同一患者群の操作前後の異なる時点でのデータ(測定値)が対(pair)として与えられている筈である.つまり"対応のある場合"に相当する.ところが同一患者群の対測定値をあたかも互いに独立した患者群についての測定値であるかのように誤解して,操作前後の平均値を通常のStudentのt検定で比較している場合がしばしば見られる.これは妥当でない.この場合は対測定値の差について,paired t検定を行うべき(正規分布するという前提のもとで)である.対測定値が変数変換後も正規分布しない場合には,paired t検定ではなく,ウイルコクソンの符号付順位和検定を行うことは図1の通りである.
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