母指手根中手関節症に対して人工靱帯を用いたThompson変法の試み

Modified Thompson technique with a artificial ligament through abductor pollicis longus tendon for of thumb carpometacarpal osteoarthritis

は じ め に

　近年，母指手根中手（CM）関節症に対して関節形成術の良好な成績が報告されているが，術後の母指列短縮予防に外固定あるいは鋼線固定を要するのが現状である^1）．最近では，母指CM関節の安定化と母指列短縮予防目的に，Yaoらが報告したFiberWire（Arthrex社，Naples）によるMini TightRope（同社）を用いたsuture button suspensionplastyの報告^2）も散見されるが，母指の固定肢位や締結の明確な強度が不明であることも指摘されている^3,4）．われわれは，早期に母指列の安定化と可動域（ROM）訓練を可能にするために，Thompson法^5）の長母指外転筋（APL）移行腱にFiberWireを通した変法を試み，FiberWireを通さない従来のThompson法と比較・検討した．