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は じ め に
母指手根中手(CM)関節症は,X線像上の病期と患者の訴える症状が必ずしも一致しない.このため一般的には全例保存的治療から治療開始するわけであるが,逆をいえば手術時期を患者に委ねることになる.患者からは「内服をするような痛みではない」,「装具をつけるのはめんどくさい」,「少しでも制限される生活をしたくない」,「装具は見た目がわるい」,「水仕事をしないといけない」,「注射は痛いからしたくない」,「したけどあんなに痛い注射はもう嫌だ」,「最初は効果あったのに最近は効果が減ってきていつまで続くのか心配」,「ともかく早く治してほしい」などの要求をされることがある.しかしながら手術的治療を提案すると,「関節を固定して動かなくなるのが怖い(関節固定)」,「骨を取るのは心配(関節形成)」,「そこまでは痛くない」などの訴えがある.これらの患者に対して,鏡視手術を併用した第1中手骨外転対立位骨切り術は医師が提案する一つの選択肢に足りえると感じている.
本疾患に対する手術術式は,海外では関節形成術が第一選択と報告されている1).しかしながら,麻生の報告では保存的治療に抵抗するのは比較的壮年期の初期変形性関節症(OA)と報告している2).実際われわれの日常診療においては,若年から壮年期にかけての,手を酷使していて,早期に仕事復帰を希望する軽度OA患者に,いかに適切な治療の選択肢を提示できるかが重要である.本稿で紹介する外転対立位骨切り術(abduction-opposition wedge osteotomy:AOO)は1992年にFutamiらが報告し3),現在も追試と良好な成績が報告されている4~7).以下にその詳細を述べる.
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