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【要 旨】
背 景:中心性の腰部脊柱管狭窄症に無症候性の椎間孔狭窄を合併した症例に対しては,椎間孔狭窄は残したまま開窓術などで中心性の除圧のみ行うことがある.そのような手術では術後に脊椎の退行性変化が進行することにより,椎間孔狭窄が遅発性に症候化して再手術を要する危険性がある.しかし,そのような中心除圧後の遅発性症候性椎間孔狭窄に関する報告は乏しい.
目 的:無症候性椎間孔狭窄を要する腰部脊柱管狭窄症に対して,中心除圧のみ行った症例における術後遅発性症候性椎間孔狭窄による再手術率,およびその危険因子を調査した.
対象および方法:2009年1月~2014年6月に当科で開窓術などの中心除圧を行った連続208例を,術前に無症候性椎間孔狭窄を有していた群と有していなかった群に分け,中心除圧後の遅発性症候性椎間孔狭窄による再手術率を比較・検討した.また,遅発性症候化椎間孔狭窄による再手術の危険因子ついてロジスティック回帰分析とreceiver operating characteristics analysis解析(ROC)で調べた.
結 果:術前に118例(56.7%)が無症候性椎間孔狭窄を有していた.そのうちの18例(15.3%)が初回手術から平均1.9年後に遅発性椎間孔狭窄による再手術を受けていた.中間位での後方すべり,さらに中間位から後屈位での後方すべり増大が有意な危険因子であり,カットオフ値はいずれも1mmであった.術前にいずれのカットオフ値も満たしていた症例の66.7%が再手術を受けていた.
結 語:本研究でわかったことは,無症候性椎間孔狭窄を有する症例に中心除圧を行うと術後平均1.9年で遅発性椎間孔狭窄による再手術を要したこと,さらに術前の後方すべりがその危険因子であることである.これらの知見は中心性狭窄に無症候性椎間孔狭窄を合併する症例に対する治療方針確立の一助になるであろう.
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