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【要 旨】
目 的:腱板断裂患者に対して保存的治療が有効であることはよく知られている.しかし,保存的治療を行う際に断裂がどのように進行するのか,断裂進行の危険因子は何かを知っておくことは重要である.一般的に若い患者,活動性の高い患者,重労作に従事している患者は進行がはやいといわれているが明らかなエビデンスはない.本研究の目的は断裂の進行がどの程度の頻度で生じているのか,またどのような患者で断裂進行がしやすいのか,その危険因子を明らかにすることである.
対象および方法:2009~2015年に当院で保存的治療を受けた症候性腱板断裂患者225例のうち,最低2回以上MRIを行うことができた171例174肩(平均年齢66.9歳)を前向きに調査した.平均経過観察期間は19ヵ月である.断裂の大きさが2mm以上増加していたものを断裂拡大ありとし,多変量解析で患者背景(年齢,性別,利き手,肩外傷の有無,合併症,喫煙,飲酒,スポーツ歴,職種),断裂の大きさ,断裂タイプ(不全・完全断裂)と断裂進行との関係を調べた.
結 果:断裂サイズの拡大を認めたのは174肩中82肩(47%)であった.最終経過観察時に断裂の長さは平均5.8±5.6mm拡大,幅は平均3.1±5.2mm拡大しており,断裂拡大の平均速度(/年)は長さ3.8mm,幅2.0mmであった.完全断裂は不全断裂に比べ有意に拡大していた(p<0.0001).中断裂はその他の断裂サイズに比べて有意に進行していた(p<0.0001).ロジスティック回帰分析では喫煙(smoking index)に有意差があった(p=0.026).年齢,性別,利き手,外傷の有無,合併症,飲酒,スポーツ歴,職種に関して進行群と非進行群との間に差はなかった.
結 語:症候性腱板断裂の約半数は1年半で拡大しており,拡大速度は1年で長さ3.8mm,幅2.0mmであった.拡大の危険因子は中断裂,喫煙,完全断裂であった.
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