誌説
ロボットとAIは整形外科医を淘汰するか
岡崎 賢
1
1東京女子医科大学整形外科教授
pp.1038-1038
発行日 2019年9月1日
Published Date 2019/9/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_seikei70_1038
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「これからAI(artificial intelligence)がどんどん発達してくるからね,診断や薬の処方が主な仕事の医者はいらなくなってくるよ.放射線科とか内科医もまずいと思うなあ」と,ある外科系の教授が宴席で言っていた.昨今のAIの進歩は目を見張るものがあり,これらの話は学会でも取り上げられている.「僕たちはロボット手術をたくさんするからね.でもダ・ヴィンチはマスター・スレーブ型だから,こちらの思うとおりに動くんだ」ともその教授は言った.「マスター・スレーブ型」.よく名付けたものである.ロボットは奴隷(スレーブ)として,主人(マスター)である外科医の思うとおりに忠実に動く.主人がいなければ何もしない.主人が上手ならロボットも上手.主人が下手ならロボットも下手.外科医はいつまでも安心である.自らの腕で患者を治せる.しかし,科学技術は,AIによる人智を越えた的確な判断と,その判断に基づいて自ら動くロボットに向かっている.主人が下手でもロボットが上手ということである.判断を見誤る主人なんかに任せておけない.「腸管吻合をもう少し丁寧にしておきました.血管吻合も完璧です」.
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