Japanese
English
臨床統計
血液型と自然淘汰
Blood types and natural selection
古賀 康八郎
1
,
増野 規夫
1
Kohachiro Koga
1
1九州大学医学部産婦人科学教室
pp.955-961
発行日 1960年10月10日
Published Date 1960/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409202304
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Ⅰ.はしがき
近年血液型と自然淘汰の問題に関する報告がよくみられる。これらは流早死産の問題を血液型の見地から検討しようとするものである。古くHirszfeld他1)は統計的に母A型,父O型の組合せから生れるA型児の頻度が64.8%であるのに反し,母O型,父A型の組合せにおいてはA型児の頻度は54.5%と減少していることに注目し,この事実は流,死産によつて不適合血型児が失われるためではないかと述べている。
Rh因子不適合による新生児溶血性疾患の発見以後,Levine他2)3)は母児間Rh因子不適合による同種免疫が,流早死産の原因ともなりうることを指摘しており,その後血液型と流早死産の問題が再び取り上げられたが,現在も賛否相半している。賛成論の根拠は,新生児溶血性疾患の発生機転である胎児抗原の母体への移行による母体内抗体の産生,さらに母体内抗体の胎児への移行という一連の免疫過程と同一の過程が妊娠早期に起る場合に,胎児が障害されて流早死産を招来するというものである。Rh抗原性は胎生初期に既に発達している事実4)からすれば,上述の機転は理論的に可能である。しかしこの過程において最も問題となる胎児抗原の母体への移行が,果していかなる機転によつて起るかは現在まだ確説をみない。
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