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【要 旨】
目 的:膝前十字靱帯(ACL)再建術において遺残組織の温存は移植腱の再構築を促進するとされている.しかしながら遺残組織の量が膝安定性にどの程度寄与するかは不明である.本研究の目的は,遺残組織による移植腱の術中被覆量がACL再建術後のpivot shift動態に与える効果を磁気センサーを用いて評価することである.
対象および方法:対象は遺残組織を温存した解剖学的2束ACL再建術を施行した38例で,手術直前と術後1年時に磁気センサーにより膝関節動態を全身麻酔下に計測した.Pivot shift現象時に生じるpeak coupled anterior tibial translation(pCAT),脛骨の大腿骨に対する後方への加速度の最大値(acceleration of posterior translation:APT)を計測した.遺残組織被覆量は関節鏡下にスコア化(0~9点)した.Pivot shift動態と被覆量を含む術前・術中因子との関連について解析した.
結 果:pCATの患健差の平均(mm)は,術前後で14.0から2.6に有意に改善し(p<0.0001),APTの患健差の平均(mm/s2)は,525.6から32.9に有意に改善した(p<0.0001).遺残組織による被覆量スコアの平均は5.3点であった.遺残組織被覆量とΔpCAT(r=−0.517,p=0.0007)およびΔAPT(r=−0.532,p=0.0005)の間に有意な相関を認めた.
考 察:遺残組織温存は術後のpivot shift動態に影響を与え,その改善度は術中被覆量により有意な影響を受けることが明らかとなった.本研究は,遺残組織を切除するよりも温存して手術をすることで良好な臨床成績が得られる可能性を示唆した.
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