私論
常識は偏見のコレクション?
上村 幹男
1,2
1骨粗鬆症・脊椎疾患センター
2かみむらクリニック院長
pp.716-716
発行日 2018年6月1日
Published Date 2018/6/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_seikei69_716
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アルベルト・アインシュタインは,「常識は18歳までに身につけた偏見のコレクションである」という言葉を残しています.医学(整形外科)の常識には今でも「偏見のコレクション」が残っているのではないでしょうか?
私が骨粗鬆症を本格的に勉強し始めたころ,「老人性の骨粗鬆症は低代謝回転型の骨粗鬆症であり,骨代謝回転の低下によって骨密度が低下する」と教科書に記載されていました.しかし,実際は高齢になると骨代謝は亢進していたのです.当時,骨粗鬆症はマイナーな分野で情報も少なく,遠くに足を延ばして専門家の講演を聞きに行きました.しかし,専門家でさえこの事実も原因も知りませんでした.仕方なく自分で骨代謝と関連する情報のデータベースを作成・解析しましたが,骨代謝亢進の原因は不明でした.データベース作成の際には腰痛のデータも入力しており,骨代謝とまったく関係ないと考えられた腰痛の有無で解析してみました.すると驚くべきことに,腰痛のある高齢者では骨代謝マーカーが有意に上昇していたのです.高齢者の腰痛と身長低下の相関に関する論文などを引用して,高齢者の骨代謝の亢進には不顕性の微小骨折が関与している可能性が高いと結論づけました.今では高齢者の骨代謝亢進と微小骨折の関連は,ほぼ常識として受け止められているのではないでしょうか?
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