連載 ワットさんのペーシェントロジィ[今,患者が主役の時代]・2
伝統的偏見
ワット 隆子
pp.490-493
発行日 1988年5月1日
Published Date 1988/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661921991
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ハートがない,個性がない
「乳房切断術を受けた対象を理解しようとする時,われわれ看護婦はともすれば『癌患者であること,手術を受けた患者であること』に注目しがちである.今回の調査の結果,多くの人が手術後長い年月を経た時期にも患肢の機能障害や乳房喪失による心理的な障害,死や再発への不安を持ちながら,しかも前向きに生活していることに気づき,彼女たちが『乳房切断術に伴う身体的心理的障害を持ちながら生活していく人』であるとの認識を看護の視点として持つことの必要性を痛感した」「乳房が特に女性性器であるために,女性としてのセルフイメージに打撃を与える体験であること」「乳房切断術を受けた女性の社会復帰への過程はこのような障害を克服していく過程であるという視点をもって看護の働きかけを見直す必要があるのではなかろうか」(近澤範子ほか:乳房切断術に伴う生活体験の実態調査,看護,33;4, 190, 1981)
これらは『看護』に発表された研究論文の一節である.専門誌上のこの手の論文を読むたびに思うのだが,どれもこれも内容が変わりばえしないのと,書き方が決まって四角四面の“論文調”であることだ.
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