連載 楽しく性を語ろう―性の健康学・2
性への偏見と抑圧
中村 美亜
pp.874-875
発行日 2007年10月15日
Published Date 2007/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401101176
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私たちの多くは,性について何か後ろめたい気持ちを持っている反面,なぜそうした後ろめたさを感じるのかと考えることはほとんどない.しかし,自分が性にどんな偏見を持っているか,普段性に関する欲望がどれほど抑圧されているかを自覚しないうちは,性についてまともに考えることなどできない.前回触れたように,ほとんどの学生は性に否定的なイメージを持っている.そのため,こちらが正確な情報を与えたとしても,それを吸収する時点で屈折して理解される可能性が高い.「でも世間ではそう考えられていない」と混乱したり,「そうは言っても,これは人と話せることではない」といった具合に,学生の頭の中で性の“安全装置”が作動し始めるからだ.そこで,第2回の本稿では,いかに私たちの社会には性に対する偏見や抑圧が蔓延しているか,そしてそれに私たちがどれほど影響されているかについて考えていこうと思う.
いきなり抽象的な話をしても学生はついてこないので,まず映像を見て自分たちの性への反応を客観的に観察することから始める.今回は,2つの音楽プロモーション・ビデオ(PV)を使った.1つ目は,2005年のレコード大賞を受賞した倖田來未の《Butterfly》のPV.“エロかっこいい”の代名詞とも言われたPVだ.ここで,倖田はセクシーな女教師に扮し学校の廊下で踊ったり,カー・ウォッシュをしながら他の女性と戯れるなど,ステレオタイプ化された男性の性的欲望を演じる.しかし,それを堂々と行う彼女のさまは,逆に女性のかっこよさとして肯定的に映し出す効果もある.
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