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特集 脊柱靱帯骨化症研究の進歩
Ⅰ.基礎研究
3.脊柱靱帯骨化を起こす間葉系幹細胞の異常
Abnormality of mesenchymal stem cells causing ectopic ossification of spinal ligament
古川 賢一
1
,
和田 簡一郎
2
,
熊谷 玄太郎
2
,
石橋 恭之
2
K-I. Furukawa
1
,
K. Wada
2
,
G. Kumagai
2
,
Y. Ishibashi
2
1弘前大学大学院病態薬理学
2弘前大学大学院整形外科
1Dept. of Pharmacol., Graduate School of Medicine, Hirosaki University, Hirosaki
キーワード:
ectopic ossification
,
spinal ligament
,
mesenchymal stem cells
,
mechanical stress
,
epigenetic modification
Keyword:
ectopic ossification
,
spinal ligament
,
mesenchymal stem cells
,
mechanical stress
,
epigenetic modification
pp.513-516
発行日 2018年5月25日
Published Date 2018/5/25
DOI https://doi.org/10.15106/j_seikei69_513
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は じ め に
脊椎には複数の縦走する靱帯があり,個々の椎骨を縦につないで脊椎を安定化するとともに,その連係運動を保証する重要な役割をもつ.その靱帯のなかで,椎孔内前面(椎体後面)と後面に位置する二つの靱帯(それぞれ後縦靱帯と黄色靱帯)は椎孔内を縦走する脊髄に接している.その脊柱靱帯が異所性に骨化を起こすことがある.靱帯組織が小さく骨化することは,加齢によって起こりうる.しかし,ある程度以上大きくなると脊髄を圧迫し,進行すると手足のしびれ,そして麻痺にいたることもあり,脊柱靱帯骨化症となる1).現在のところ,侵襲性がきわめて高く,患者の負担の大きい脊椎手術以外に有効な治療法や発症進展の予防法が確立しておらず,手術後の再発の可能性もある.したがって患者のQOLを向上させるためにも,安全性の高い優れた薬物治療法の確立が求められている.そのためには病因の特定が欠かせない.家族性が認められることから,同疾患の原因には遺伝的要因が推定されて,原因遺伝子の探索がすすんでいる2).また疫学的には,患者の内分泌,代謝などの疾患が病因となりうると考えられている3).一方,臨床的にはメカニカルストレスがかかる靱帯部位に骨化の発症と進展が起こりやすいとも報告されている4).したがって,脊柱靱帯骨化症はさまざまな因子が組み合わさって起こる多因子疾患と考えられる3).
そこでわれわれは,本疾患の病因を明らかにするために原点に立ち返って,そもそも骨化する実体は何かを問うことにした.それが明らかになれば,発症の機序解明への重要な手がかりが得られ,治療の標的もみえてくると考えたからである.
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