Japanese
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骨・関節感染症の治療戦略 Ⅱ.予 防
2.局所抗菌薬投与のエビデンス
抗菌薬含有セメントの人工関節周囲感染予防における役割
-――意義と限界
Role of antibiotic-loaded cement for prophylactic use for the prevention of periprosthetic joint infection:significance and limitation
森井 健司
1
,
細金 直文
1
,
市村 正一
1
T. Morii
1
,
N. Hosogane
1
,
S. Ichimura
1
1杏林大学整形外科
1Dept. of Orthop. Surg., Kyorin University, School of Medicine, Tokyo
キーワード:
antibiotic-loaded bone cement
,
SSI
,
THA
,
TKA
Keyword:
antibiotic-loaded bone cement
,
SSI
,
THA
,
TKA
pp.32-37
発行日 2022年4月25日
Published Date 2022/4/25
DOI https://doi.org/10.15106/j_besei81_32
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は じ め に
抗菌薬含有セメント(antibiotics-loaded bone cement:ALBC)は1969年にBuchholzらにより感染人工関節の一期的再置換術に適応されたのを嚆矢とする1).セメントビーズ,スペーサーや感染人工関節再置換術など治療目的で使用される際,セメント40gあたり1.0g以上の抗菌薬を使用するのに対し,初回置換術における予防的適応では1g以下が標準的使用量である(表1)2).2018年の整形外科領域感染に関する第2回国際コンセンサスでは初回人工関節置換術におけるALBC適応の手術部位感染(SSI)/人工関節周囲感染(periprosthetic joint infection:PJI)予防に関するエビデンスがclinical questionとして取り上げられた.レビューの結果として,「決定的なエビデンスが欠如しており,コスト,有害事象,耐性菌発現等の観点から全例使用を推奨しない」という推奨文がmoderateとのエビデンスレベルとともに提示されたが,投票結果は賛成38%,反対58%でコンセンサスが得られなかった3).英国やノルウェーでは本法が頻用されている4,5)一方で,米国で初回人工関節に使用されることはまれであり6),本法に関してはいまだ定まった評価は欠如している.本稿ではALBCの予防的適応に関する現在までの知見を紹介し,その有用性と限界を概説する.
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