特集 プライマリハ(プライマリケア×リハビリテーション治療)のすすめ―内科医が押さえておきたい基本と新常識
[Chapter 2] リハビリテーション医療に必要な新常識
行動経済学と心臓リハビリテーション
水野 篤
1
1聖路加国際病院 循環器内科
キーワード:
行動経済学
,
ナッジ
,
アドヒアランス
Keyword:
行動経済学
,
ナッジ
,
アドヒアランス
pp.1208-1211
発行日 2025年12月1日
Published Date 2025/12/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_naika136_1208
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
★★★行動経済学は,人の非合理的な意思決定傾向を理解し,強制や強い経済的インセンティブなしに望ましい行動を促す「ナッジ」などのアプローチを提供する.これは,患者のアドヒアランス向上や医療従事者の行動変容を促す強力なツールとなりうる.
★★ナッジの具体的な介入策として,目標設定,フィードバック,リマインダー,金銭的インセンティブなどがリハビリテーション領域で有効であることが海外の実証研究で示されている.とくに,金銭的インセンティブは,心臓リハビリテーション(CR)の継続率を飛躍的に向上させる効果が報告されている.
★デジタル技術(ウェアラブルデバイス,スマートフォンアプリ,VR/ARなど)と行動経済学の融合は,将来的なリハビリテーション医療の形を変える可能性を秘めている.しかし,これらの革新的なアプローチの多くは現状,保険適用外であり,今後の政策的支援や制度の見直しが必要である.また,無意識に影響を及ぼすナッジには,患者の自律性を損なう可能性といった倫理的側面への深い配慮が不可欠である.
★★★:一般内科診療で必要な内容,★★:総合内科専門医試験レベルの内容,★:専門性の高い内容

© Nankodo Co., Ltd., 2025

