- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
気管支喘息(以下,喘息)の治療は,目覚ましく進化を遂げ,多くの患者がその恩恵を受けられるようになってきた.そのようななかでも増悪を繰り返す患者がおり,まれではあるものの喘息の増悪の裏にほかの疾患が隠れていることを経験する.好酸球性肺炎や好酸球性多発血管炎性肉芽腫症,アレルギー性気管支肺真菌症は喘息が先行し,肺に陰影が出現する代表的な疾患である.そのほかにもまれではあるが,悪性腫瘍の合併や,全身性ステロイドの長期使用との関連が疑われる肺結核の発症などもありうる.頻回に喘息の増悪を繰り返す場合には,喘息以外の症状の併存に気づきにくく,さらに全身性ステロイドに症状や所見がマスクされてしまうこともある.咳嗽や呼吸困難が遷延する場合には,胸部X線など画像での評価が必要となる.喘息患者は粘液栓などが原因で低酸素血症を伴わない呼吸困難を訴えることがあるが,全身性ステロイドで喘鳴が消失し,喘息症状が改善したにもかかわらず,低酸素血症を伴う労作時呼吸困難が残存する場合にはとくに注意が必要である.たとえ胸部X線やCTで異常所見が明らかでなくてもである.
かつて,2例の肺血栓塞栓症と1例の肺血管内リンパ腫(pulmonary intravascular large B-cell lymphoma)1)を経験した.この3例はいずれも喘息増悪を繰り返し,全身性ステロイドの使用を余儀なくされていたが,喘息症状,喘鳴が改善するも酸素飽和度低下を伴う労作時呼吸困難があり,緊急入院となった.喘息では造影剤の使用が困難であるため,肺血栓塞栓症の診断がただちに行えないジレンマがある.血管内リンパ腫の患者は画像が印象的であった.すでに症例報告を行っているため,詳細は文献1)を参照いただきたい.
© Nankodo Co., Ltd., 2022