特集 好きになる呼吸器学―珠玉の症例集から
珠玉の症例集 ~印象深い症例・思い出の症例より~
[Case 13]肺がん術後のすりガラス陰影
-「先生,症状はまったくないんです」
鈴木 大和
1
1藤田医科大学 呼吸器外科
キーワード:
すりガラス陰影
,
間質性肺炎の急性増悪
,
肺がん術後
Keyword:
すりガラス陰影
,
間質性肺炎の急性増悪
,
肺がん術後
pp.917-920
発行日 2022年11月1日
Published Date 2022/11/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_naika130_917
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Case summary
78歳男性.76歳時に脳梗塞のため加療,後遺症なし.慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease:COPD),高血圧症,鉄欠乏性貧血あり.18歳から78歳まで20本/日の喫煙歴あり(手術1ヵ月前に禁煙).健康診断で撮像した胸部X線で右下肺野に腫瘤影を指摘され,当院呼吸器内科に紹介となった.
精査の結果,右下葉肺腺がん(cT2bN0M0,cStage ⅡA)と診断された(図1a).また胸部聴診上,両側背側優位にfine cracklesを聴取し,修正MRCスケール1度の呼吸困難を認めた.呼吸機能検査ではVC 3,210mL(105.2%),FEV1.0 2,350mL(119.3%),FEV1/FVC 69.90%,DLco 8.13mL/分/mmHg(76.8%)であった.胸部X線像では腫瘤影のほか,両側の中下肺野,外側優位の網状影を認めた.また胸部CT所見では両側胸膜直下に広範囲に線状網状影を認め,両側下葉には牽引性気管支拡張像と蜂巣肺を認めた(図1b).各種膠原病マーカーは陰性であった.これらの所見からprobable特発性肺線維症(idiopathic pulmonary fibrosis:IPF)と診断された.手術加療目的に当科に紹介となり,ロボット支援下右肺下葉切除術,縦隔リンパ節郭清を行った.術後1日目より経口摂取,理学療法を開始し,術後4日目に撮像した胸部CTで右肺中葉に新規のすりガラス陰影を認めた(図2).
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