特集 エキスパートがお答えします! 日常臨床のあるあるの疑問
第9章:血液
胃に限局したびまん性大細胞型B細胞性リンパ腫と診断された患者がいます.胃全摘術は勧められますか?
磯部 泰司
1
1福岡大学 腫瘍・血液・感染症内科
pp.634-635
発行日 2022年9月1日
Published Date 2022/9/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_naika130_634
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お答えします 胃の出血や穿孔などのリスクが非常に高い場合以外,胃に限局したびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)のケースで胃全摘術を含む胃切除術をお勧めすることはありません.
DLBCLは現時点で90種類くらいある悪性リンパ腫の病型のうち,約1/3を占める最も一般的なものです.しかしながらDLBCLには亜型も多く,他の低悪性度B細胞リンパ腫から組織学的転換を起こして発症する二次性のものも存在するため,“ゴミ箱的” 診断がなされる病型といえます.そのため,DLBCLといっても臨床病態は多様であり,画一的な疾患として捉えないようにする必要があります.非特定型のDLBCLであっても,さまざまなリンパ節以外の病変をとりますし,同時多発的に病変が拡大し,その生命予後は年齢や腫瘍量,節外病変部数,臨床病期,生物学的特徴によっても影響を受けます.DLBCLの根治を目指すための治療の第一選択は全身性の薬物療法(化学免疫療法)であり,手術や放射線療法は局所制御性に優れた治療法であるものの,補助的役割を担うものと捉えるべきです.
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