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臨床経過
患者は30歳代,男性.
上腹部の不快感が続くため,近医で上部消化管内視鏡検査(esophagogastroduodenoscopy ; EGD)を受けたところ,胃に多発した隆起性病変を指摘されて当院を受診した.家族歴や既往歴に特記事項はなかった.当院でEGDを再検したところ,前庭部,胃角部大彎,胃体部,胃穹窿部に多発する粘膜下腫瘍(submucosal tumor ; SMT)様病変を散在性に認めた(Fig.1).一部の病変は表面に発赤とびらんがみられ,背景粘膜には萎縮の所見はみられなかった.細径プローブを用いた超音波内視鏡検査(endoscopic ultrasonography ; EUS)では,第2,3層に主座のある比較的均一な低エコー像を認め,第4層は保たれていた(Fig.2).以上より,悪性リンパ腫を疑った.さらに,明らかな潰瘍形成を伴わないことやEUSで病変が粘膜下層までにとどまることから低悪性度リンパ腫〔MALT(mucosa-associated lymphoid tissue)リンパ腫〕の可能性が高いと考えられた.
しかし,病変が広範囲に多発してみられ,低悪性度リンパ腫にしては内視鏡所見が“派手過ぎる”印象があった.隆起型胃MALTリンパ腫では,病変の深部に形質転化したびまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(diffuse large B-cell lymphoma ; DLBCL)が存在することがあるため,胃角部大彎の病変(Fig.1b)からボーリング生検を行った.病変の表層から採取された生検組織の病理組織学的所見では,小型異型リンパ球の浸潤を認め,lymphoepithelial lesionがみられた(Fig.3).免疫組織化学染色でCD20,IRTA1(FCRL4)が陽性,BCL2が弱陽性,CD3,CD5,CD10が陰性であったことからMALTリンパ腫と診断された.一方,ボーリング生検で病変の深部から採取された生検組織の病理組織学的所見では,中型〜大型の異型リンパ球のびまん性浸潤を認め(Fig.4),Ki-67染色では表層のMALTリンパ腫の部分に比べて明らかな陽性細胞の増加が観察され(Fig.5),DLBCLと診断された.AP12-MALT1染色体転座は認めなかった.
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