特集 意外と知られていない⁉ 自科の常識・他科の非常識
第7章:消化管
機能性消化管障害だと思っていたら好酸球性胃腸炎だった
西田 裕
1
,
藤原 靖弘
1
1大阪市立大学大学院医学研究科消化器内科学
キーワード:
機能性消化管障害
,
過敏性腸症候群
,
機能性ディスペプシア
,
好酸球性胃腸炎
Keyword:
機能性消化管障害
,
過敏性腸症候群
,
機能性ディスペプシア
,
好酸球性胃腸炎
pp.600-602
発行日 2021年9月1日
Published Date 2021/9/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_naika128_600
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近年,過敏性腸症候群や機能性ディスペプシアなど,器質的な病変が認められないにもかかわらず慢性的な消化器症状を呈する疾患群として,機能性消化管障害への関心が高まってきている.過敏性腸症候群は,排便と関連する反復性腹痛と便通異常(下痢・便秘)を繰り返す状態であり,かつその原因が悪性腫瘍や炎症性腸疾患などの通常の臨床検査で診断し得る器質的消化器病によるものではないものである.一方で,機能性ディスペプシアは,症状の原因となる器質的,全身性,代謝性の疾患がないにもかかわらず,慢性的に胃・十二指腸に由来すると思われる症状が生じているものと定義されている1).すなわち,過敏性腸症候群や機能性ディスペプシアなどの機能性消化管障害の診断には器質的消化器病の除外が必須であるが,機能性消化管障害と同様の症状をきたし,積極的に疑わなければ診断が難しい疾患も存在する.その代表が好酸球性胃腸炎である.好酸球性胃腸炎は消化管への好酸球主体の炎症細胞浸潤によって,腹痛,嘔吐,下痢,腹水による膨満などのさまざまな腹部症状を生じる疾患である.そのため,好酸球性胃腸炎の患者が機能性消化管障害と診断され,適切な治療が受けられないことも起こり得る.そこで,機能性消化管障害と好酸球性胃腸炎に関して概説し,それぞれの診断および鑑別のポイントを紹介する.
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