特集 意外と知られていない⁉ 自科の常識・他科の非常識
第8章:神 経
80歳以上で発症した認知機能低下ではAlzheimer病を筆頭鑑別としないほうがよい
島田 斉
1,2
1新潟大学脳研究所附属統合脳機能研究センター臨床機能脳神経学分野
2国立研究開発法人量子医学研究開発機構量子医科学研究所脳機能イメージング研究部
キーワード:
認知症
,
神経原線維変化型老年期認知症
,
高齢者タウオパチー
,
原発性年齢関連タウオパチー
Keyword:
認知症
,
神経原線維変化型老年期認知症
,
高齢者タウオパチー
,
原発性年齢関連タウオパチー
pp.604-607
発行日 2021年9月1日
Published Date 2021/9/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_naika128_604
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症 例
患者は80歳代の男性(あるいは女性).主訴は数年前からのもの忘れ.80歳を超えたころからもの忘れが出現し,数分前のこともすぐに忘れてしまう.食事・更衣・整容・排せつなどの日常生活動作には支障がなく,この1年ではあまり大きな変化はないが,3~4年前と比べると少しもの忘れの症状が進んでいる気がする.Lewy小体型認知症を疑わせるような鮮明な幻視,レム睡眠行動異常症などを疑わせる病歴は明らかでない.診察上は失語症,失行,粗大な麻痺,運動失調,Parkinson症状などは認めない.心理検査では,3語の遅延再生がほとんどできずに近時記憶障害は明らかだが,それ以外の項目での失点は少ない.血液検査では認知機能低下を単独で説明し得るような内科的疾患(神経梅毒,ビタミンB群欠乏症,甲状腺機能異常など)は認めない.頭部画像検査(CTやMRIなど)では,脳虚血性変化は軽度で年齢相応であり,側頭葉内側の海馬周囲には軽度の萎縮がみられる.
© Nankodo Co., Ltd., 2021