特集 意外と知られていない⁉ 自科の常識・他科の非常識
第2章:循環器
がん治療の際には心機能障害に注意する必要がある
親川 拓也
1
,
志賀 太郎
1
1がん研有明病院腫瘍循環器・循環器内科
キーワード:
がん治療関連心機能障害
Keyword:
がん治療関連心機能障害
pp.394-397
発行日 2021年9月1日
Published Date 2021/9/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_naika128_394
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がん治療による心血管有害事象には,心機能障害/心不全,冠動脈疾患,弁膜症,不整脈,高血圧,血栓塞栓症,肺高血圧症などがある1).心臓障害,血管障害は他の有害事象より比較的少ないが,重篤な病態につながることもあり注意が必要である.がん治療による心機能障害は,がん治療関連心機能障害(cancer therapeutics-related cardiac dysfunction:CTRCD)とよばれ,原因薬剤として,アントラサイクリンやtrastuzumabがよく知られている.近年,がん治療の急速な進歩により,多くの新しい抗がん薬が用いられるようになった.これら新規がん治療薬の登場に伴いがん治療の成績が向上した反面,これらの薬剤にも心血管障害を引き起こすものがあり,新規がん治療薬によるCTRCDも問題となっている.とくに,血管内皮増殖因子(vascular endothelial growth factor:VEGF)経路阻害薬を中心とした血管新生阻害薬,プロテアソーム阻害薬,BCR/ABL阻害薬などの分子標的治療薬,そして昨今目覚ましくがん治療の適応範囲を広げる免疫チェックポイント阻害薬(immune checkpoint inhibitor:ICI)については十分に認識しておくべきであろう.そして,放射線治療による心血管障害も忘れてはならない2).
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