特集 意外と知られていない⁉ 自科の常識・他科の非常識
第2章:循環器
ST上昇,急性心筋梗塞症と思っても急性大動脈解離の除外を忘れてはいけない
大西 隆行
1
,
桃原 哲也
1
1川崎幸病院川崎心臓病センター循環器内科
キーワード:
急性大動脈解離
,
急性心筋梗塞症
,
除外診断心
,
エコー図検査
Keyword:
急性大動脈解離
,
急性心筋梗塞症
,
除外診断心
,
エコー図検査
pp.399-402
発行日 2021年9月1日
Published Date 2021/9/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_naika128_399
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胸痛の鑑別診断では,致命的な臨床転帰につながり得る疾患の除外が必要不可欠である.すなわち,心血管系では急性冠症候群と急性大動脈解離,肺では急性肺塞栓症や緊張性気胸,そして食道穿孔などの縦隔炎である.病歴や身体所見から疾患を類推していく診断学も重要であるが,見逃す可能性が否定できないため,これらの疾患を常に想定し一つずつ除外することで診断率が向上する.診断学では一元的に説明できる病態を考察することが通常であるが,胸痛の鑑別診断では致命的な二つの疾患が同時に存在し得る.急性心筋梗塞症と急性大動脈解離である.致命的な二大疾患が併存していれば当然死亡率は高率となり,早期治療に向けて診断の遅れは許されない.一元的に説明する通常の診断学に長けている内科医であっても,一つの診断がついたことによる安心感のため,もう一方の除外が疎かになる可能性がある.本稿では,急性心筋梗塞症と急性大動脈解離の合併の機序や頻度,診断と治療について解説する.
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