1枚のシェーマ
もう一つの左室形成術―endocardial linear infarct exclusion technique(ELIET)
夜久 均
1
1京都府立医科大学心臓血管外科
pp.586
発行日 2019年8月1日
Published Date 2019/8/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_kyobu72_586
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左室形成術として,「Dor手術」「septal anterior ventricular exclusion(SAVE)手術」「overlapping」とさまざまな術式がなされているが,われわれは「もう一つの左室形成術」としてendocardial linear infarct exclusion technique(ELIET)を考案し,60例以上にこの方法を行っている.このシェーマは,ELIETを最初に行った2006年の手術記録を描いたものである.症例は57歳・男性で,3枝病変に対してすべての冠状動脈に経皮的冠状動脈形成術(PCI)がなされて開存していたものの,側壁梗塞で心不全,僧帽弁閉鎖不全となり手術適応となった.側壁には貫壁性心筋梗塞が認められ,左室形成としてはBatista手術が通常採られる術式であった.ただ回旋枝はすべて開存しており,Batista手術で側壁を切除するには忍びなく,ELIETを行うこととした.冠状動脈を損傷しないように側壁を心尖部から心基部に向けて長軸方向に切開し(図1,2),心室内腔のnon-viableとviableな心筋の境界部の心内膜を,心基部から心尖部に向けてlinearに縫合していき(図3),切開した自由壁を2層に閉鎖した.この操作によって前・後乳頭筋の基部が寄せられることになり,僧帽弁のデザリングも軽度になる.ELIETは同様の手技で前壁中隔,下壁に対しても応用可能である.
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