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どんな薬?
子宮頸がんの発症には,ヒトパピローマウイルス(human papillomavirus:HPV)の感染が関与していることがわかっています.HPVが排除されず,持続的に感染することで子宮頸がんの前段階である異形成や上皮内がんとなり,数年以上かけて浸潤がんにいたります.子宮頸がんの予防にはHPVの感染を防ぐことが重要で,HPVワクチンを接種することが推奨されています.すでにHPVワクチンの接種が進んでいる欧米の国々では,HPV感染や前がん状態の発生が有意に低下したとの報告があります.日本でも子宮頸がんワクチンが公費で受けられるようになり,少しずつ接種者は増えてきています.少し時間はかかりますが,将来日本でも子宮頸がんの罹患率が下がるのではないかと期待してしまいます.
2021年(最新データ)に,日本で新規に子宮頸がんと診断された患者は10,690名で,女性の部位別罹患数は乳がんなどに比べて低いのですが,現時点では毎年微増している状況です.年齢階級別にみると女性の39歳以下では,40歳以上に比べて,子宮頸がんの割合が大きいです.子宮頸がんは早期(限局期)に見つかると5年純生存率は94.1%と非常に高いのですが,進行期(遠隔転移)で見つかると24.9%とかなり低いです1).
進行期の子宮頸がんに対する1次治療はプラチナ系薬剤とパクリタキセルの併用療法が標準的ですが,2014年にベバシズマブの上乗せ,2021年には免疫チェックポイント阻害薬(immune checkpoint inhibitor:ICI)のペムブロリズマブが使用できるようになり,治療効果は上がっています.しかし,2次治療以降は薬剤の選択肢が非常に少なく,イリノテカンやICIのセミプリマブが使用できることになりましたが,それでも十分な効果は得られていません.そこで新たな治療薬として,子宮頸がんの腫瘍細胞などに高発現しているTFを標的とした抗体薬物複合体(antibody-drug conjugate:ADC)のチソツマブ ベドチンが承認されました.チソツマブ ベドチンは1次または2次治療歴のある再発または遠隔転移を有する子宮頸がん患者を対象とした国際共同第Ⅲ相試験[SGNTV-003(innovaTV 301)試験]で,全生存期間の中央値が11.5ヵ月と,化学療法の9.5ヵ月に対して優越性が検証されました.しかし,チソツマブ ベドチンには重大な副作用としてあまり多くの抗がん薬では経験のない眼症状が出現します.この眼症状は,視力低下など失明にいたる可能性があるため,予防と症状観察,軽減のための支持療法を行う必要があります.チソツマブ ベドチンの眼症状の原因として考えられるのは,がん細胞だけでなく結膜表面に発現しているTFにチソツマブ ベドチンが結合することで細胞障害が起こるといわれています.また,抗体薬であるADCは長く体内にとどまるため,抗体から微小管阻害薬(ベドチン)が徐々に分離されることで,循環血液中に長くとどまり,副作用の眼の症状が悪化すると考えられています.治療前から治療期間中の眼科診察,適切な点眼薬の投与,コンタクトレンズの禁忌,眼の冷罨法などをしっかり実施する必要があります.

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