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どんな薬?
ブレンツキシマブ ベドチンは,抗体に殺細胞性の低分子化合物を付加した抗体薬物複合体(antibody-drug conjugate:ADC)です.ADCは,抗体が特定の分子をもつ細胞に結合する性質を利用して,抗がん薬を直接がん細胞まで運び,そこで薬を放出することで,抗腫瘍効果を発揮するように創薬されています.ブレンツキシマブ ベドチンは,CD30陽性の細胞を標的とした抗CD30キメラ型モノクローナル抗体(ブレンツキシマブ)と,微小管阻害作用をもつ低分子薬剤(モノメチルアウリスタチンE:MMAE)をリンカーで結合させた薬で,米国の製薬企業によって開発されました.CD30抗原の発現は,健常者では活性化されたT細胞およびB細胞でみられますが,腫瘍細胞ではホジキンリンパ腫(hodgkin lymphoma:HL)のReed-Sternberg細胞と未分化大細胞リンパ腫(anaplastic large cell lymphoma:ALCL),リンパ増殖性疾患細胞表面に発現しています.
ホジキンリンパ腫は病期ステージI~IV期に分類され,標準治療としてドキソルビシン,ブレオマイシン,ビンブラスチン,ダカルバジンを併用するABVD療法や,病変領域への放射線照射が行われます.しかし,これらの治療法では再発または難治性のホジキンリンパ腫などで十分な治療効果が得られないため,ブレンツキシマブ ベドチンの承認が期待されていました.日本では2014年1月に再発または難治性のCD30陽性のHLおよびALCLの成人患者に対して承認され,2018年9月には未治療のCD30陽性のHL成人患者,2019年12月には未治療および再発または難治性のCD30陽性の末梢性T細胞リンパ腫(peripheral T-cell lymphoma:PTCL)成人患者および再発または難治性のCD30陽性のHLおよびPTCL小児患者に承認されました.現在は,ブレンツキシマブ ベドチンを単剤あるいは殺細胞性抗がん薬との併用で使用されています.末梢神経障害,感染症,進行性多巣性白質脳症,骨髄抑制,過敏症,腫瘍崩壊症候群,急性膵炎,肝機能障害,肺障害などの副作用が報告されているので使用中は十分なモニタリングが必要です.
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