今月の症例
認知機能の低下を認める高齢患者のがん薬物療法における意思決定支援 ~高齢者総合機能評価を用いた治療の検討と多職種協働でのかかわり~
増藤 亮子
1
1東京医科大学八王子医療センターがん相談支援室/がん化学療法看護認定看護師
pp.435-440
発行日 2025年7月1日
Published Date 2025/7/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_kango30_435
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はじめに
日本は超高齢社会がますます進み,約800万人いるとされる「団塊の世代」が75歳となる「2025年問題」が現実の年となった.高齢者の医療需要はますます高まり,医療現場では高齢がん患者の治療のむずかしさに直面する機会が増えている.その理由として高齢者は個人差が大きく,暦年齢だけで治療を一概に決められないこと,加齢に伴う生理的変化だけでなく併存疾患や老年症候群を有することも多く,治療にも個別化が求められることが挙げられる1).一方で高齢者は臨床試験の対象外となることが多く,根拠となるエビデンスが少ないことも治療の選択をむずかしくしている.とくに認知機能の低下を認める場合,意思決定能力が過小評価されやすく,治療の選択に大きな影響を及ぼす2).しかし,そのなかで医療者は認知機能が低下していてもその人らしく意思決定しながら尊厳をもって暮らしていくことの重要性を認識し,自己決定の尊厳に基づき支援すること,それにはまず,本人の表明した意思・選好を尊重することから始めることが大切である.
今回,「治療をしたい」と意向を示したが,認知機能の低下を認めているため,治療がむずかしいと考えられていた患者に多職種でかかわることで治療を開始できた症例を経験したので報告する.

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