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はじめに
高齢者のがん治療は,侵襲が少ない治療方法が次々と確立され,合併症コントロールも改善されて,予備能が低くなりがちな高齢者も治療選択をしやすくなってきている.また,治療を選択する側の高齢者も治療に耐えられる身体状況をもち合わせているケースが増加している傾向にあり,厚生労働省の『平均寿命と健康寿命の推移』1)で示されているように健康寿命が年々伸びていることからも,“元気な高齢者”が増えていることがわかる.しかしながら,加齢に伴う身体機能の状況には大きな個人差があることや,さまざまな疾患が複雑に影響し合うことが少なくないことも事実で,こうした状況をふまえてそれぞれの患者に合った治療方法を検討する必要がある.
また,高齢者のがん治療において検討するべきことは身体的状況だけではない.たとえば認知機能の低下により自身での判断がむずかしくなったり,治療方針の判断を家族などの他者で決めてしまうケース,また治療が可能な状態でも「歳だから」「やったところでしかたがない」と積極的治療を選択しないケースなどがある.上記のような身体的状況のみならず精神的状況・社会的状況などから医療者の目線では「その選択が本当によいのだろうか」と疑問を抱くようなケースに出会った経験がある方もいるのではないだろうか.
このように,治療選択の幅が広がっていること,個人差を十分に考慮する必要があること,さらには認知機能の課題で判断がむずかしくなることなどから,“治療をしない”という選択も含めた“その人に合った治療”を決めることは容易とはいえない.今回は高齢者の全体像をつかむ方法の一つとして総合的高齢者機能評価(comprehensive geriatric assessment:CGA)を挙げ,CGAを活用しながら意思決定支援することについて,事例も交えながら紹介していく.
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