- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
はじめに
1981年から現在まで,がんはわが国の死亡原因の第1位であり,2019年の推定累積生涯がん罹患リスクは男性で66%,女性で51%と,おおよそ2人に1人が一生のうちにがんと診断される1).「令和5年度版高齢社会白書」によると,わが国の65歳以上人口は,昭和25年(1950年)には総人口の5%に満たなかったが,昭和45年(1970年)に7%を超え,さらに,平成6年(1994年)には14%を超えた.高齢化率はその後も上昇を続け,令和4年(2022年)には29%に達している2).がんは加齢とともに発生する特性があるため,がんと診断される高齢がん患者も増加の一途をたどっている.
がん薬物療法は,分子標的治療薬や免疫チェックポイント阻害薬の登場により,治療成績が著しく向上している.また,支持療法の進歩によって,高齢がん患者ががん薬物療法を受ける機会が増えている.しかしながら,高齢者はエビデンスとなる臨床試験の対象から除外されることが多いため,臨床試験で安全性が確認された治療が必ずしも日常診療で遭遇する高齢者にも有効で,安全であるとは限らない3).高齢者は,臓器機能障害や併存疾患,栄養状態や認知機能など,それぞれ多様な患者背景があり,これらのリスクを把握したうえで治療の選択や副作用マネジメントを行う必要がある.
高齢者の多様な状況をアセスメントする方法として,高齢者総合的機能評価(comprehensive geriatric assessment:CGA)がある.CGAは,老年医学の領域では確立された臨床評価の手法である.がん領域においても,がん患者にCGAを実施することで,治療や予後,QOL (quality of life)への影響が,いくつかの研究で明らかになっている4-6).そこで本稿では,がん薬物療法を受ける高齢がん患者の特殊性やCGAを活用したアセスメントについて考えてみたい.
© Nankodo Co., Ltd., 2024