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どんな薬?
免疫チェックポイント阻害薬は,2000年以降に開発が進み,本邦では2014年に承認・販売された抗PD-1抗体のニボルマブに始まり,2024年3月現在,8剤(表1)が承認されています.免疫チェックポイント阻害薬は,薬によってがんを直接攻撃するというものではなく,免疫細胞を活性化させて体内のがん細胞を攻撃するというもので,がん薬物療法のパラダイムシフトとして注目が高まっています.
がん細胞の中には,免疫細胞と結合して免疫細胞にブレーキ(抑制)をかけ,免疫の攻撃から逃れる仕組みをもっているものがあります.がん細胞とリンパ球などの免疫細胞が結合する部分のタンパク質を免疫チェックポイントといいます.免疫チェックポイントは複数あるのですが,現在薬として開発されているのはPD-1, PD-L1, CTLA-4という分子です.免疫を抑制するタンパク質のPD-1分子を発見したのは京都大学の本庶佑先生で,米国テキサス大学のジェームス・アリソン先生はCTLA-4分子がT細胞によるがん細胞への攻撃にブレーキをかける働きをもっていることを明らかにしました.この成果が認められ,2名の先生は2018年にノーベル生理学・医学賞を受賞されています.
CTLA-4を標的とした薬は,2015年に承認されたイピリムマブと今回取り上げているトレメリムマブの2剤のみです.免疫チェックポイント阻害薬単剤で効果がでる患者さんは2割程度であるため,抗CTLA-4抗体と抗PD-1抗体など,2剤の免疫チェックポイント阻害薬を組み合わせた治療の開発が進んでいます.
免疫チェックポイント阻害薬は今までのがん治療で効果が望めなかった悪性黒色腫などのがん種にも有効であり,ベネフィットが注目される一方で,特有の副作用も多く報告されています.免疫細胞のブレーキ(抑制シグナル)を解除する作用をもつため,免疫反応が過剰になり自己免疫疾患に類似した症状を呈します.これを,免疫関連有害事象(immune-related adverse event:irAE)とよびます.irAEの管理は,多職種からなるチーム医療で対応する必要があります.
▼表1 本邦で承認されている免疫チェックポイント阻害薬(2024年3月現在) 種類 薬剤名 抗CTLA-4抗体 イピリムマブ トレメリムマブ 抗PD-1抗体 ニボルマブ ペムブロリズマブ セミプリマブ 抗PD-L1抗体 アベルマブ アテゾリズマブ デュルバルマブ
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