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CASE
ニボルマブにより複数のirAEをきたした進行胃がん患者の1例
患者:69歳、男性。進行胃がん(手術不能、肝転移あり、ステージⅣB)に対して、202×年1月からニボルマブによる治療(化学療法との併用)が開始された。202×年7月4日から発熱、倦怠感、食思不振および下痢が出現した。それまで自炊していたが、上述の症状出現後は易疲労が強く台所に立つのも困難となり、アイスクリームとジュースのみの摂取となった。5日ほどで熱は下がったものの、倦怠感、食思不振、下痢に加えて腰背部痛、四肢筋痛も出現したため、7月19日に入院・精査の運びとなった。主要な鑑別疾患として❶原病(胃がん)進展、❷感染症、❸ニボルマブの副作用[免疫関連有害事象(immune-related adverse events : irAE)]、❹殺細胞性抗がん薬の副作用、❺上記いずれとも無関係な病態の5つのカテゴリーを挙げて検索が進められた。❸としてirAE筋炎、重症筋無力症、下垂体炎、腸炎の可能性があったが、血清コルチゾール0.17μg/dL、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)<1.5 pg/mLと有意に低値であったことより、irAE下垂体炎の可能性が最も高いと考えられた。ホルモン補充療法の開始後、各種症状(下痢を含む)の劇的な軽快を認めた。その後行われた負荷試験にて、ニボルマブ誘発性ACTH単独欠損症の診断確定に至った。
202×年7月27日から、頻回の水様便が出現した。Clostridioides difficile感染症などを除外しつつもirAE腸炎が最も疑われたため、下部消化管内視鏡検査が行われた。肉眼的には正常粘膜から一部浮腫状であったが、いずれの生検部位からも中等度の炎症細胞浸潤を伴う病変を広範囲に認め、ニボルマブ誘発性腸炎に矛盾しない所見であった。高用量ステロイド療法(プレドニゾロン1 mg/kg)によって、下痢・腸炎症状の速やかな改善を認めた。
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