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看取りケアとグリーフケア
私は,16年間,訪問看護に従事しています.6年前,実母のがんの発症を機に認定看護師を目指し,自宅で母を看取りました.患者の家族の立場での看取りの経験は,私自身のがん緩和ケアとグリーフケアに対する態度や看護観に大きな影響を及ぼしています.がん拠点病院の地域連携の緩和ケア学習会で,「ゆうがや会」の活動を知り,メンバーとして活動に参加しています.今回の連載のテーマである,「ゆうがたに」「わいわいがやがや」の「ゆうがや会」は,「看取り」と「グリーフケア」を学習テーマの柱とする自主学習グループです.ゆうがや会での論文抄読会や,知識と経験の共有,学会交流集会での意見交換は,緩和ケア認定看護師としての実践につながる知識となり,看取り支援やデスカンファレンスの実践にも活かされています.
私が勤務する訪問看護ステーションでは,看護師,医師ならびに多職種との協働のもと,多くのがん患者さんの看取りを支援しています.看取りケアは,訪問看護師にとって,やりがいもありますが,精神的につらいと感じることも多くあります.時には,スタッフどうしが,「つらい」「しんどい」と心の内を打ち明けて語り合うことがあります.近年のがん患者さんの罹患後の生存率は延長していますが,私たちのステーションでも,治療を希望しながら,がん終末期を迎えている患者さんの看取りが年々増加しています.がんと診断されてから終末期にいたるまで,患者さんそれぞれに,治療経過で体験してきたドラマがあります.
最近私が担当したケースでも,終末期であっても治療継続の意思決定に思案されている患者さんやご家族に出会い,一緒に悩みながら,最善を尽くしてケアを担当しています.しかしながら,終末期であるにもかかわらず,通院を続け短期入院を繰り返し,病態予測や急変時の対応の説明や緩和ケアが行われないケースが散見されます1).以上から,訪問看護師には,看取りを見据えたケアの提供が求められると,いつも思っています.
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