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はじめに
がん治療のめざましい発展により,がん患者の生命予後は改善し長期生存する患者が増加している.その一方で,患者は長期的な治療による有害事象の影響を受け,日常生活動作(activities of daily living:ADL)の低下に伴い社会生活に多くの支障をきたし,生活の質(quality of life:QOL)が低下することが多い.また,超高齢社会を迎えている日本においては高齢がん患者も多く治療を受けており,がん治療は介護にも多大な影響を及ぼしている.がん看護の対応範囲は広く,診断時から一連の治療経過とその療養に伴う生活のサポートまで多くの場面での介入が必要である.
がん治療においては,ADL低下が治療継続や療養場所の選択を左右するため,がんのリハビリテーションに介入することは,患者の治療機会の損失を防ぎ,患者が希望する療養の実現につながる.また,患者のADL低下予防は,患者のみならず患者を支える家族などの負担軽減にも影響するため,治療とADL低下予防のバランスをよく見極めることは重要である.患者の治療や療養のさまざまな場面にかかわる看護師が,あらゆるがん患者のADLの維持向上のために積極的に働きかけ,治療による弊害を最小限にとどめ,患者,家族のQOL向上に寄与することが,がんのリハビリテーションにおける看護の役割であるといえる.
がん治療やがん患者の療養にかかわる看護師は,治療関連のマネジメントや患者の日常生活への影響に直接触れる機会が多い.そのため,看護師は患者の意向に関する情報を得たり,患者の日常の動作を観察し,がんのリハビリテーションのニーズを把握し,患者のQOL向上に必要な介入について多職種チームに提案したり,療養生活のなかでのリハビリテーションを意識したかかわりをもつことができる.
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