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促進因子・阻害因子・バリアの特徴
がん薬物療法によって発現する悪心・嘔吐(chemotherapy-induced nausea and vomiting:CINV)は40%以上の患者に影響を及ぼす,もっともおそれられるがん薬物療法の有害事象の1つである.CINVは患者の生活の質を損ない,がん治療のアドヒアランスの低下や,治療効果を含む薬物療法の減量を誘発する1).
がん患者に対するCINV治療の基本2)は,治療目標は発現予防である.また,過不足ない適切な治療を行うために,投与予定の抗がん薬の催吐性リスクに応じた制吐薬を使用すること,CINV発現のリスクのある期間に最善の予防を行うこと,制吐薬の選択は,催吐性リスクとともに,過去の制吐療法の効果,患者背景因子を考慮して決定すること,がん治療に直接起因しない悪心・嘔吐の原因を除外,または対応すること,制吐薬は経口・注射薬ともに有効性は同等であるので,患者に適する投与経路を選択すること,など考慮する必要がある.
主な内服の制吐療法には,予防投与で用いられることの多い,NK1受容体拮抗薬のアプレピタント,5-HT3受容体拮抗薬のオンダンセトロン,グラニセトロン,副腎皮質ステロイドのデキサメタゾン,頓用薬の多受容体作用抗精神病薬のオランザピン,ドパミンD2受容体拮抗薬のメトクロプラミド,抗精神病薬のプロクロルペラジン,ハロペリドールなどがある.また,予期性悪心・嘔吐に対しては,ベンゾジアゼピン系抗不安薬が有効であり,『NCCNガイドライン』,『MASCC/ESMOガイドライン』でも推奨されている.予期性悪心・嘔吐の予防にロラゼパムが,予期性悪心の予防にアルプラゾラムが有効であることが確認されている.心理学的治療法として,系統的脱感作,リラクセーション,催眠/イメージ導入法なども有効であることが示されており,薬物療法と併せて患者に合った方法を探索する必要がある2).
CINVの関連因子には,治療関連因子と患者関連因子がある.治療関連因子としては,抗がん薬の種類,投与量,放射線照射部位などが挙げられる.また,患者関連因子としては,年齢,性別,飲酒習慣,がんの病態,併存疾患などが挙げられる.重要となる因子や特徴としては,急性嘔吐との関連因子は,女性,若年,飲酒習慣がない,喫煙歴がないこと,遅発性嘔吐との関連因子では,女性が抽出されている2).また,患者関連のリスクファクターとしては,悪心・嘔吐歴,女性,予期性CINV,若年,不安,早朝嘔吐歴,少ない飲酒歴が挙げられる3).
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