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近年,がん治療薬の新規開発や適応拡大,先進医療やがんゲノム医療の発展により,がんの集学的治療の選択肢は増加し,多くのがん患者が長期にわたり治療を受ける傾向にあります.進行・再発がん患者は,限られた可能性の治療や未知の治験などから治療を選択し,治癒を目指すことのできない病気の治療を継続するか,またはがんと闘う治療を終了し,症状を和らげながら病気の進行と付き合う緩和医療一本にするかの決定を迫られます.いずれを選択してもそのゴールは死に向かっており,多くの患者は藁にもすがる気持ちでわずかな可能性にも期待をもちながら,終わりの見えない道を歩むことになります.また,進行・再発がん患者が体験する,疼痛,呼吸困難などの苦痛症状は死を想起させ,ADLが制限されることにより生活の質の低下が起こり,先行きの見えない不安や悲嘆が増強することも少なくありません.
進行・再発がん患者にかかわる看護師は,患者の複雑な病態を把握し,患者・家族の希望や状況に応じた意思決定支援を行い,治療のサポート,有害事象マネジメント,心身の症状マネジメントを並行し,先々の患者の変化を予測しながら療養のサポートを行っていく必要があると考えます.また,急激な病状の変化が起こる場合もあり,患者との十分なコミュニケーションを図ることができない状況で意思決定支援を行わなければならない状況も起こり得ます.このような患者とのかかわりのプロセスにおいては,解決困難な身体症状のマネジメントや,患者・家族の強い不安や予期悲嘆にも対応し,倫理的問題や患者背景の複雑な問題にも直面することが多く,経験豊富な看護師であってもジレンマや疲弊感を感じると思います.
本特集では,進行・再発がん患者にかかわる看護師が知っておくべき基礎知識とともに,臨床でよく出合うケアに難渋するようなケースの紹介,および昨今話題のがんゲノム医療,アドバンスケアプランニングに関して,臨床でのがん看護実践者が安心して積極的にケアに取り組むことができる情報を,がん医療・がん看護のスペシャリストの最新知見も含めて解説します.また,体験者の生の声からがん患者の不安や生活への影響を学び,患者・家族のニーズを理解し,つらい状況に寄り添いながら質の高い看護実践ができる力をもち,社会や医療の動向に即したがん医療の現場で活躍できる一助となることを期待します.
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