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がんチーム医療の歴史を紐解くと,古くからの,ほかの職種は黙って医師の言うことを聞くべきであるというパターナリズム(父権主義)から,医療の高度化,複雑化,細分化を経て,各職種がフラットな関係性の下,専門性を発揮し協働しながら医療を行う必要性が重視されるようになりました.2001年日本癌治療学会シンポジウムにて,ハワイ大学がんセンターディレクターの上野直人先生(講演当時MDアンダーソンがんセンター准教授)が「患者中心のがんチーム医療」について講演し,その後Japan TeamOncology Program (J-TOP)によるがんチーム医療に関するさまざまな教育・啓発活動などを通じて,わが国においても徐々にその概念が浸透してきました.また,がんチーム医療を学んだ各職種のトップランナーによる施設内外でのさまざまな活動においてチーム医療を実践することにより,全国に拡がっていきました.がん領域のみならず,医療現場において「チーム医療」という言葉が飛び交うようになって幾久しいですが,チーム医療にはスキルが必要であることはまだそれほど知られていないように感じます.単に専門家が集まって医療を行えば質の高い医療を提供できる医療チームといえるのでしょうか? 答えは否であると考えます.
チームとは,ある共通のミッションをもち,望ましい将来像・実現したい世界観(ビジョン)を共有した集団を意味し,単純な集合を意味するグループとは異なります.患者中心のチーム医療とは,患者自身をもチームの一員と考え,医療にかかわるすべての職種がそれぞれの専門性を発揮することで,患者の満足度をより高めることを目指した医療を意味します.そうしたチーム医療の実践のためには,チームサイエンスの概念を理解し,チーム医療の実践に必要なスキルセットを習得する必要があります.また,チームサイエンスの概念を熟知し,スキルを活用するためには,従来のマインドセットを転換させ,専門職としてステップアップすることも必要となります.
本特集では,チームサイエンスの概念,およびチーム医療に必要なスキルセットについて具体的ケースを紹介しながら解説しています.そして,項目ごとにその内容に関するコラムを,編集者が分担して執筆しています.
本特集がチーム医療にむずかしさを感じている方やもっとパフォーマンスを上げたいと考える方々の壁を乗り越えるヒントとなり,患者中心のがん医療を担う看護実践者にとって,多職種チームの中で力を発揮できる一助となることを願います.
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