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連載にあたって
エコーで便秘を評価できる時代がやってきました.
これまでの便秘の評価は,排便回数の聴取などの問診や患者による排便日誌が主体でした.日々の業務では,便が2日出てないので,「刺激性下剤を飲みましょう」「摘便,坐薬,浣腸をしましょう」という会話が飛び交っていました.
「本当に便が貯まっているのだろうか?」,「便があるかどうかわからない中で摘便をするのもなぁ……」,「このタイミングの薬物治療は意味があるのだろうか?」,と日々の臨床で感じていました.エビデンスに基づいた治療をする時代,患者QOLが重要視される時代の中で,これまでの便秘の評価方法ではどうしても排便ケアや治療が曖昧なものになってしまいモヤモヤした経験はなかったでしょうか? とくにがん領域のケアに携わる看護師の皆さまは,がんの病態や術後ならびに薬剤の副作用により,さまざまな場面で便秘で苦しむ患者さんとかかわり,そのケアにジレンマを感じているのではないでしょうか.
しかし,近年ではエコーによって直腸の便貯留を可視化することで,自信をもって便秘の評価ができ,ケアや治療につなげることが可能な時代となってきました.
ただ,エコーって,むずかしそう,大きくて重たい,そう思われる方もいるかもしれません.今では,直腸にエコーをあて便秘(直腸の便貯留)を評価するpoint of care ultrasound (POCUS)の概念が普及し,さらにはスマートフォンサイズのポケットエコーが各社から開発され,誰でも簡便に短時間で,直腸の便貯留を評価できるようになりました.
本連載は,便秘エコーに少しでも興味をもったがん領域の看護師が,軽やかに第一歩を踏み出せるように,便秘エコーで必要な基礎知識からエコーの使い方,臨床における事例検討をとおしてアセスメントの方法とポイントを共有します.本連載を,便秘で悩む患者さんの手助けと便秘の評価・ケアをする看護師の皆さまのモヤモヤ解消にお役立ていただき,明日からの便秘ケアが変われば嬉しく思います.
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