セミナー 合併症をもつ患者の術前・術後の全身管理
連載に当たって
勝屋 弘忠
1
1名古屋市立大学医学部麻酔・蘇生学講座
pp.917-918
発行日 1997年11月20日
Published Date 1997/11/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413902179
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はじめに
術中の麻酔・全身管理および周術期の重症患者の治療に当たる麻酔・集中治療医として外科系全般について最近とみに感じることは,近年,内視鏡手術が急速に普及するなどその変化が顕著であることと,その一方できわめてリスクの高いことが予想される高齢者や重症患者にも積極的に手術が行われる傾向にあることである。すなわち,一方ではより侵襲度の低い安全な手術の開発が進んでおり,他方ではよりリスクの高い患者にも根治性あるいはQOL向上を期待して手術が行われている。
その一方で,これは既にいい古されていることではあるが,人口の高齢化は年々進んでいる。私どもの集中治療部でも,この10年間で,75歳以上の高齢者症例が全入室患者に占める割合が4.7%から10.8%に倍増している1)。単に暦年齢が高いことがリスクが高いというつもりはないが,加齢とともに,高血圧,糖尿病といったいわゆる"生活習慣病(成人病)"を合併する率が高くなることは否めない。重篤な痴呆でコンタクトも取れない患者や,糖尿病・高血圧・腎不全など1人で複数の臓器,系の障害を有する患者もざらである。もちろんこのような臓器障害を有して手術をする患者は必ずしも高齢者とは限らない。これらの患者に対して,周到な準備の下に麻酔,手術が施行されるわけである。
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