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2015年に『がん薬物療法における曝露対策合同ガイドライン』が発刊され,早6年が経った.2019年には『がん薬物療法における職業性曝露対策ガイドライン』として改訂され,この間,がん薬物療法に携わる医療従事者の認識は確実に高まり,各施設で変革が進んだ.
この問題について,日本でいち早く薬剤師の立場で推進してこられた濱 敏弘先生(公益財団法人がん研究会有明病院)は,一時期を「成長期(過剰反応期)」,近年を「成熟期(小康期)」と表現し,近年の落ち着きは職業曝露に対する正しい理解が進み定着したのであればよいが,タピオカミルクティーのように一時のブームに終わらないことを懸念すると述べられている.まさに同感である.
今般のコロナ禍により,個人防護具の不足や,スタッフの急な異動などに直面したことで,曝露対策を維持するむずかしさについて,改めて考えさせられた読者も多いことだろう.また,病院収益の悪化を受け,「見えにくい安全」でありコストのかかる曝露対策について,組織に申し入れにくくなったという読者もいらっしゃるだろう.このようなときだからこそ看護師は専門職として「なぜ,それが必要なのか」,エビデンスを通して改めて認識し,自施設での取り組みや日常の実践に反映させていくことが求められるのだと考える.
そこで今回,『がん薬物療法における職業性曝露対策ガイドライン』において看護業務に直結するCQ(クリニカル・クエスチョン)について,エビデンスとして参照された研究や最新の研究の概要,ならびにそのCQに関連した,参考になる臨床実践例を紹介する連載を企画した.本連載を通して,曝露対策が下火になることなく成熟し続けていけること,そして日本看護協会の提唱する「看護職が生涯を通して安心して働き続けられる環境づくり」,すなわちヘルシーワークプレイス(健康で安全な職場)の実現に寄与できることを願っている.
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