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はじめに
がん薬物療法に伴う末梢神経障害は,化学療法誘発性末梢神経障害(chemotherapy-induced peripheral neuropathy:CIPN)といわれ,有害事象共通用語規準(Common Terminology Criteria for Adverse Events:CTCAE)(表1)では,末梢性運動ニューロパチー,末梢性感覚ニューロパチーという項目で評価されている.
運動神経障害では,指先や手足に力が入りにくい症状によって,書字や衣服のボタンかけがしづらくなったり,持ったものを落としたり,立ち上がりにくさやスムーズに歩けないなどの日常生活への影響が出ることがある.感覚神経障害では,しびれや感覚鈍麻,ビリビリした痛み,バランス感覚・平衡感覚の乱れによるふらつき,難聴や耳鳴りにより,不快な感覚を持続的に感じることによるQOLの低下や転倒リスクが高まり,運動神経障害同様に日常生活に影響が及ぶ.
CIPNを起こしやすい抗がん薬は多数あり(表2),とくにタキサン系抗がん薬は複数のがん種や治療ラインで使用されているが,有効な支持療法は確立されていない.CIPNの支持療法としては,がん薬物療法の休薬や減量,神経障害性疼痛治療薬や抗うつ薬,漢方薬の投与がある.非薬物療法においては,治療中の冷却療法や圧迫療法によるCIPNの悪化予防効果,運動療法の取り組みによる症状発現の予防や軽減について報告が挙がっているが,臨床試験の段階である.その中でも,冷却療法や運動療法については有効性が示されている1).
CIPNのケアでは,患者に起こっている末梢神経障害の性質や程度(重症度),日常生活への影響を確認し,患者がその症状を抱えながら,安全・安楽に過ごせることが重要となる.今回は非薬物療法の中でも,有効性が示された冷却療法と運動療法に関連した看護師の役割について述べていく.
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