特集 女性のがん ~治療とケアの最前線~
女性のがん特有のケア
HBOC診療における遺伝カウンセリング
犬塚 真由子
1
INUZUKA Mayuko
1
1昭和大学大学院保健医療学研究科
pp.585-586
発行日 2022年7月1日
Published Date 2022/7/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_kango27_585
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はじめに
生殖細胞系列のBRCA1遺伝子またはBRCA2遺伝子に病的バリアントが確認された場合,遺伝性乳がん卵巣がん(hereditary breast and ovarian cancer:HBOC)と診断される.HBOCは遺伝性腫瘍の1つであり,一般集団と比較して,乳がん,卵巣がん,前立腺がん,膵臓がんの発症リスクが高まることが知られている.また,HBOCは常染色体顕性遺伝(優性遺伝)疾患であり,親から子へ2分の1の可能性で引き継がれる.
HBOCという1つの疾患であっても,クライアントの考え方や不安の大きさなどは一人ひとり異なる.遺伝性腫瘍の遺伝カウンセリングを受けるクライアントが遭遇する心理社会的問題として,①がんリスクとどのように向き合うか(リスク低減切除術や子どもをもつかどうかの意思決定・葛藤など),②現実的な問題(生命保険,就職など),③家族と社会の問題(家族に遺伝学的検査の結果を伝えるかどうか,家族を責めてしまう気持ちなど),④子どもに関連する問題(リスクが高いことを子どもにどのように伝えるか,子どもに対する罪の意識など),⑤がんとともに生きること(がん発症・再発への心配・おそれなど),⑥感情的問題(ストレス,怒り,抑うつなど)が挙げられている1).遺伝カウンセリングとは,「疾患の遺伝学的関与について,その医学的影響,心理学的影響および家族への影響を人々が理解し,それに適応していくことを助けるプロセスである」2).
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