連載 がん薬物療法看護のWhat’s Trending! Past ☞ Current ☞ Future 【8】
看護師が知っておきたいEGFR阻害薬情報
菅野 かおり
1
1公益社団法人日本看護協会神戸研修センター
pp.557-560
発行日 2021年7月1日
Published Date 2021/7/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_kango26_557
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
はじめに
1900年代後半から,がんの発症や増殖のメカニズム,がんの遺伝子解析,血管新生や転移のメカニズムなどの基礎研究が活発に行われ,がんの特徴(Hallmarks of Cancer)が明らかになってきた.これらの研究の成果として,がん細胞の増殖と分裂,転移などにかかわる重要なタンパク(分子)と,それをコードする遺伝子変異,ドライバー遺伝子の同定などが明らかになった.
2000年代の初めには,これらのタンパク(分子)を標的とした分子標的治療薬が数多く開発され,実用化が進んでいる.中でも,がん細胞の成長,増殖,分化にかかわるシグナル伝達システムや刺激を媒介するシグナル分子が注目され,チロシンキナーゼやセリン/スレオニンキナーゼなどを標的にした薬剤が多く開発されている.シグナル伝達で重要な働きをもつ分子のチロシンキナーゼやセリン/スレオニンキナーゼの多くは,がん化を誘発する能力をもったがん遺伝子(変異遺伝子)がコードするタンパク質であり,異常なシグナル増殖や細胞周期の進行によってがん細胞を増殖させている.
本稿では,分子標的治療薬の中でもっとも早期から創薬が進んでいるEGFR(epidermal growth factor receptor)阻害薬に着目し,看護師として知っておきたい薬剤情報について述べる.
© Nankodo Co., Ltd., 2021