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1981年以降,がんはわが国において死因の第1位を占めてきました.以来がん医療は国策として国際社会とも連携し,予防・治療・共生のキーワードの下に,治療にのみならず,支持療法,緩和ケア,患者・家族ケアを充実させ,さまざまな課題に挑みながら日夜進歩を続けてきました.
しかし2020年,新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の蔓延によって,がん医療はこれまでまったく予測しなかった危機と対峙することになりました.その危機を如実に表したことで大きな衝撃を走らせたのは,2020年4月1日に日本外科学会が打ち出した「手術の実施について医学的必要性と限りある医療資源の効率的・効果的配分の観点から多角的な判断のもとで実施する」という提言です.計画的,継続的,意志的,協働的というがん医療のありようが危機にさらされた象徴的な出来事でした.
1996年にわが国でがん看護専門看護師が誕生して以来,高度看護実践の概念が浸透してきました.高度看護実践の使命は患者や家族が直面する複雑な健康問題を紐解き,看護学の知識や技術を集結して改善するほか,社会や医療のニーズに対応するためにチームの中心的役割として組織を率いることです.生命体も社会も統合体であり,その中で変化を起こす能力と,経験から学び適応に導くという行為は,看護学のスペシャリストが有する能力の真価にほかなりません.
これまで,看護学のスペシャリストは能動的な変革を起こす役割を担ってきました.とりわけ,がん看護の分野では「がんとの共生」を牽引してきました.しかし新型コロナウイルス感染症の蔓延を受け,受動的な変革を迫られている状況にあります.私たちはこの経験に何かを学び,感染症の蔓延という負荷を新しい時代を前進する力に変換することができるはずです.
本企画ではがん医療の最前線にあってリーダーシップを発揮するがん看護スペシャリストたちの取り組みを紹介します.
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