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直腸がんは年々増加し,診断数は年間4万9,000人以上(2020年)に及ぶが,治療法の発展により,5年相対生存率は71.8%(2009~2011年)となっている(国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計」全国がん登録).
直腸がんに対して行われる主な手術法として,肛門を残さずに直腸を切除し永久ストーマを造設する腹会陰式直腸切断術(abdominoperineal resection:APR)と,肛門を残して直腸を切除する低位前方切除術(low anterior resection:LAR)や括約筋間直腸切除術(intersphincteric resection:ISR)がある.近年は手術技術の進歩により,肛門を温存するLARやISRが増加している.LARやISRでは永久ストーマを回避できるが,一時的ストーマの造設は必要になることが多い.またストーマを閉鎖した後に,頻便・便失禁・便意切迫・残便感・肛門痛といった排便障害が高頻度に発生し,患者のQOL (quality of life)は著しく低下する.
直腸がんの手術では,がんを切除することができたとしても,ストーマや排便障害をもちながら生活することになる.ストーマや排便障害は,局所的な問題だけではなく,日常生活や心理社会的側面にも影響を及ぼすことがあるため,術前からの継続的なチームアプローチが必要である.
今回の連載では,直腸がんで手術を受ける患者の術前アプローチから,術後のストーマおよび排便障害のリハビリテーション,合併症の予防対策,日常生活の支援などについて,全6回を企画している.本連載を通して,病棟・外来・在宅医療の現場における直腸がん患者への看護ケアの参考にしていただければと考えている.
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