特集 がん患者に寄り添うコミュニケーション ~事例で学ぶ患者とのかかわりかた~
Ⅱ.コミュニケーションの実際 ~事例編~
強いこだわりがある患者 便が出ないことにこだわり続けて看護師を悩ませた膵臓がん患者
野村 優子
1
1がん・感染症センター都立駒込病院看護部/精神看護専門看護師
pp.171-174
発行日 2021年2月15日
Published Date 2021/2/15
DOI https://doi.org/10.15106/j_kango26_171
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❁ 事例紹介
Qさん,70代後半,男性.
妻と2人暮らし.2人の娘は近くでそれぞれの家族と暮らしていた.定年で自分の会社を閉じて,アマチュアの試合で優勝するほどの腕前のゴルフを楽しみながら過ごしていた.
2週間前に膵臓がんステージⅣ期と診断を受けた.手術はできず,閉塞性黄疸で黄疸が強いため,抗がん薬治療も黄疸が軽減してからでないとできないと言われていた.減黄のため,内視鏡的経鼻胆管ドレナージを行ったが,まだ黄疸は軽減していない状態にあった.
病棟看護師に,繰り返し同じ質問をしたり,「便が出そうで出ない.つらい」と言い,朝晩に浣腸と摘便を要求していた.下剤はマグミット®(酸化マグネシウム)を毎食後に1錠ずつ内服していた.また,センノシドが頓用処方されていたが,毎日排便があったため,看護師がセンノシドの頓用をQさんにすすめていなかった.摘便をして便が出るときもあれば,出ないときもあるが,毎回便が出ないと「少し出るときもあるからやってよ」と,繰り返し浣腸と摘便の訴えが続いていたため,病棟看護師から困っていると相談され,話をきくために訪室した.そこで,Qさんの面談を行った.
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