特集 がん患者に寄り添うコミュニケーション ~事例で学ぶ患者とのかかわりかた~
Ⅱ.コミュニケーションの実際 ~事例編~
不眠② 術後の抗がん薬治療への不安のためか,病棟を落ち着きなく歩き回り不眠がみられた食道がん患者
三浦 美和子
1
1東京都済生会中央病院がん診察統括センター/がん看護専門看護師
pp.167-170
発行日 2021年2月15日
Published Date 2021/2/15
DOI https://doi.org/10.15106/j_kango26_167
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❁ 事例紹介
Pさん,60代後半,女性.
患者は会社の検診で食道腫瘍を指摘され,精密検査目的で入院していた.半年前から咳嗽,食事のときの通過障害を認め,右胸に押されるような持続する痛みがあった.精密検査の結果,医師より,食道がんの早期であるⅠ期の扁平上皮がんであることを告知され,手術をすすめられていた.看護師は夫とともに面談に同席し,患者の様子から医師の説明をきき,告知されたばかりで混乱しているのではと思った.看護師は「このまま少しお話をうかがってもよいですか」と話しかけた.医師から食道がんに対して,内視鏡を用いた手術の内容,縫合不全などの手術後の合併症の話,手術後に細胞障害性抗がん薬による薬物療法と放射線療法を行うことなど説明を受け,患者は手術後の生活が心配だと話した.看護師は,手術後の生活に対するイメージがつかずに不安があるのだろうと思いお話をきき始めた.
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